熊野奥照神社・境内林ナラ枯れ伐採の記録 【前編】

熊野奥照神社・境内林ナラ枯れ伐採の記録 【前編】

コラム

はじめまして。青森県で伐採・造園・外構工事を営んでおります「かねひら造園」代表の兼平直樹です。この度、弊社のホームページ内に新しくコラムを開設いたしました。

これから、私たちが日々手掛けている工事の様子や、現場でのこだわりなどを詳しくご報告してまいります。地域の皆様に役立つ情報もお届けできればと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

さっそくですが、2025年に携わった数多くの現場の中でも、私の心に深く刻まれている忘れられない案件があります。

それは、弘前市に鎮座する国の重要文化財・熊野奥照神社様の境内林で発生した、深刻な「ナラ枯れ」被害への対応でした。歴史ある神社を守るという、極めて重い責任を伴う挑戦の記録です。

事態の発覚と、急を要した判断

9月初旬、「青森県弘前市の国の重要文化財である熊野奥照神社様において、境内林の一部が枯れて傾いているため、状態を調査し、必要であれば伐採も検討したい」とのご相談をいただきました。

樹木が枯れるにはまだ少し早いこの時期、一抹の不安を覚えた私は、早速現地に足を運ぶことになりました。

そこで目にしたのは、枯死した木が2本、樹勢の弱い要観察の木が2本。いずれも恐れていた「ナラ枯れ」と呼ばれる樹木の伝染病が疑われる状態でした。

しかもそのうちの1本は、神社拝殿側へ大きく傾いている状況。

もし倒木すれば国の重要文化財に
甚大な被害が及ぶ恐れがある——。

その危険性と切迫した伐採の必要性について、直ちに神社側へ報告した。

さらに、外部専門家を招いて幾度かの調査を進めたところ、該当樹木の根本にフラス(害虫の掘り進めた木屑と糞が混ざったもの)が確認され、いずれも「ナラ枯れ」であると専門家によって断定されることとなりました。

さらにナラ枯れの被害は、調査を当初に確認していた枯死した2本と、要観察であった2本、さらに新たに枯れはじめていた2本の合計6本にまで急速に感染および症状の進行が広がっていることが判明し、事態はより緊急性を帯びたものになっていました。

このナラ枯れという病気の進行速度と被害の広がりを目の当たりにし、大規模かつ迅速な工事が必要となると判断した私たちは、急ぎ作業計画をまとめまるための追加調査を進めるのと同時に、県内外の事業者への協力要請や必要な重機の手配など、神社を守るため万全の作業体制を整えるべく準備を進めました。

境内林ならではの難題

計画を進める中で、もう一つ大きな壁が立ちはだかっていました。
そこは神社を取り囲むように木々が立ち並ぶ境内林。樹齢百年を超える木々が密集していて、このままでは作業をサポートする重機を搬入するスペースがほとんどありません。

安全で確実な作業を実現するには、
重機の力が不可欠——。

すぐに「重機・車両の搬入出用道路を新たに敷設する」という選択肢を考えついたものの、道路を通すためにはルート上にある健康な樹木もいくつか伐採する必要がありました。

私たちは神社担当者様をはじめ関係者の皆様に状況と必要性を提案したところ、「神社を守るためなら」と快くご理解をいただきました。

時間との勝負、道路敷設

刻一刻と、状況は悪化していました。本殿に向かって大きく傾いだ樹木は、目に見えてその角度を深め、枝先が屋根を撫でるほどに迫っています。風が吹くたびに枯れた樹木の軋む音が響き、私たちの緊張感をより一層煽り立てました。

しかし、一刻を争う事態であっても、ただ闇雲に重機を進ませるわけにはいきません。

私たちは元々の景観を壊さないよう、残す木、残さない木を慎重に選択し、作業エリアまで続くルートを慎重に選定ながら、経路上の樹木の伐採と抜根、搬出、道路となる地面には砕石をしきつめ、さらに養生として強化プラスチック板の敷設と工程を繰り返し、ついに、搬入出用の道路が完成しました。

敷設された道路の先に目をやると、空気が一段と張り詰めたのが分かりました。スタートラインに立てた安堵よりも、これから対峙する作業の困難さに、背筋が伸びる思いでした。

茂みの奥に眠っていた“過去の痕跡”

伐採に先立ち、まずは足元および作業エリアの安全確保のために、地面が見えないほど生い茂っていた草木や竹林の刈り取りから行いました。

すると、茂みの中から大量の伐倒されたままの原木や抜根されていない切り株、さらには古い施設の土台跡まで姿を現しました。

過去の作業者も搬出経路が確保できず、
やむなく残したのかもしれない——。

今回の道路敷設がいかに必要だったかを物語る発見でもありました。

予想外の出来事ではありましたが、今回新たに整備した道路があったことで、これらの原木や切り株、廃材を迅速に撤去することが出来ました。