緊張感のある伐採作業
道路と作業エリアを整えたことで、ようやく本格的な伐採作業がはじまりました。
最初に取り掛かったのは、本殿側へ大きく傾いた最も危険な1本です。守るべきは国の重要文化財である本殿。神社が損壊した場合の被害額は数億円規模とも試算が出ており、万が一にも失敗は許されません。
枝を落とす方向、幹を倒す方向、風、建物との距離——。
一つの判断が文化財の未来を左右する状況であり、正確性とスピード感が求められる高度な伐採作業となりました。


まずは、重要文化財の本殿中央に傾倒していたナラ枯れした大木の伐採からはじめました。傾く荷重の元となっている幹のように太い大枝を打ち落とす作業を行います。枯れているとはいえ、この時に打ち落とした枝葉だけで2トン超の重量にもなります。
最後に、残った太い幹を上部から順に安全に切り落とすことで、最も懸念であった本殿へ傾いた樹木の伐採は、無事完了しました。


残るナラ枯れと診断された4本の樹木も一本ずつ木の状態や周囲の安全を見極めながら慎重に伐採を進めました。
限られた空間での伐採作業や落下コントロール、重機操作は難易度が高く、現場の全員が集中力を研ぎ澄ませて作業に取り組む日々が続きましたが、無事想定していた期間内に、全てのナラ枯れの伐採を終えました。


未来を見据えた仕事
今回の工事は、単なるナラ枯れ被害木の伐採にとどまりませんでした。
神社という神聖で厳かな場所という関係上、次にこの規模の整備が行われるのがいつになるかは分かりません。
10年後、100年後の神社の姿を想像しながら、
残すべき木を選び、間伐を行う——。
だからこそ、私たちは神社担当者様や関係者の皆様と何度も協議を重ね、境内林の歴史的価値や地域の自然環境に果たす役割などを踏まえた「包括的な保全計画」をご提案、了承いただき、境内林全体を保全するための間伐も工期の中で実施いたしました。
この作業は、まさに未来への贈り物だと感じています。


工事完了、そして残された道
こうして、調査・計画から道路敷設、伐採、整備まで、多くの課題と向き合いながらも、関係者の皆様や地域の方々、協力事業者の皆様のお力添えにより、無事に工事を終えることができました。
敷設した道路は、参拝者の散策路や今後のメンテナンス用の通路としてこれからも活用されることになりました。
また、道路に使った砕石の一部は参道や拝殿周囲の化粧石として再利用させていただき、神社の新たな景観づくりにも役立っています。


メディア取材

今回の、国の重要文化財をナラ枯れの被害から守るという工事は、全国的にもあまり記録されたことのないケースであったとのことで、いくつかのメディアからの取材を受けることにもなり、多くの方々に工事内容とともにこのナラ枯れ問題を知っていただく機会もいただきました。
大変栄誉で重責のある仕事だと感じておりましたが、
多くの方々に注目していただいたことで、より一層身の引き締まる思いで作業にあたることができました。
おわりに
今回、熊野奥照神社の境内林におけるナラ枯れ被害の伐採作業に携わり、自然と文化財の関係性、そしてそれを守る責任の重さを改めて実感いたしました。
ナラ枯れは目に見えないうちに進行し、気づいたときには周囲の樹木にも大きな影響を及ぼす恐ろしい伝染病です。
国の重要文化財をナラ枯れの被害から守るという工事は、一つ一つの判断にこれまで以上の慎重さが求められる大変な作業ではありましたが、関係者の皆様や地域の方々、協力事業者の皆様など、たくさんのお力添えにより、無事に終えることができました。心より感謝申し上げます。
今回の経験を通じて、私たちの仕事は「ただ樹木を切り草花を整えていくこと」ではなく、「自然と人、そして文化をつなぐ橋渡し」であると改めて感じました。
今後も、地域の風土や歴史、文化的背景を理解しながら、長期的な視点で自然を活かした街づくりとその保全に力を入れてまいります。
今後とも、株式会社かねひら造園をよろしくお願いいたします。
